ヘアコミュ

夏の納涼特集「百物語」

今回のPOSLOG!企画は夏本番の今涼しくなれるような企画。納涼「百物語」です。
POSLOG!メンバーが実際に体験したという心霊体験をもとにドキュメンタリー形式の文章を作成しました。
夏の夜に涼しくなるような、背筋も凍る心霊体験(怪談)をお楽しみ下さい。
また、恐怖やホラーの苦手な方、心臓の弱い方はご遠慮下さい。
尚、当企画は自己責任のもとに購読をお願い致します。当企画の結果いかなる現象、症状が起きましてもPOLOG!では一切の責任を負いません。あらかじめご了承をお願い致します。
※この物語は実話をもとに再構成されたフィクションです。実際の人物、団体とは一切の関係はございません。

真夏の風鈴青いワンピース呪いのビデオ

怪奇#001
真冬の風鈴 愛知県西尾市在住Fさん

 

 自分は霊感が強い方だと、自覚していた。
 近所の寝たきりのお婆さんが夜中にベランダに立っているのを仕事帰りに見たら翌日、そのお婆さんが亡くなったという話を聞いたり、雨の日に自宅の前に見しらぬ青白い人を見たら一週間後に遠方の親戚が亡くなってしまったり。とにかくそんな体験をよくタイプの人間だった。
 金縛りなんかも日常茶飯事で、本当に良くあるから慣れっこだった。
 思うに、幽霊という存在はその存在に恐怖を抱かず、尚且つその存在を肯定的に受け入れる人間だけが、その存在を受信できるテレビの受信チャンネルのようなものが開くのだと思う。 もっとも今の自分には開けないが。
 何でだって?
 それは、幽霊を畏怖するようになってしまう経験をしてしまったから。
 そして今日はそんな経験を皆さんに語ろうと思う。 冬の風鈴 。一般的に、幽霊は「夏」のイメージだが、私は比較的に「冬」に見ることが多い。
 その理由は定かではないが、夏のじっとりとした湿った空気より冬の乾いた空気の方がより感度が敏感になるのではないか、と自分では分析している。
 あの体験をしたのも、確かに冬だった。
 真冬の12月。大学時代。冬休み。
 長い冬休みを持て余し、私は部屋のベットで本を読んでいた。時刻は正午過ぎ。昼食を終えた満腹感も相まって眠気に襲われ、その眠気に気持ち良く体を委ねてしまおうかと思っていたころ。

 チリンチリーン。

 風鈴の音が何処からか聞こえてくる。最初は空耳だと思って気にも留めなかった。
  だが、今一度鳴り響く風鈴の音。

 チリンチリーン。

 さすがに違和感を感じ、本を枕元に置き窓を開け外を覗いてみる。
 しかし周りを見渡してもそれらしいものは見当たらなかった。
「目に見えるところで鳴っている訳じゃないのか…」
 私はそう思い窓を閉めるが、違和感の一つの解答に気づく。
「風が吹いていない?」
 外を覗き込んで気づいた。冬の刺すような空気が肌に触れるものの、それは吹きつけるものではなく、そこに存在する大気が冷えているだけのもの、眼下にみえる木々も遠くに見える神社の林も微動だにしていない。
 無風といって良い凪いだ状態だった。
「風も吹いていないのに、何故風鈴の音なんて…」
 なんとも言えない、焦燥感にも似た胸に走る感覚。
 私は窓を閉めて、鍵をかけ仰向けになり布団をかぶると瞳を閉じた。
 とりあえず眠ってしまおう。そうすれば何も無かったことになる。そんなことを思って出た行動かもしれない。

 チリンチリーン。

 しかし無情にも風鈴は鳴り響く。
 しかもそれは回を増すことに、近づいていることに気づく。

 チリンチリーン。チリンチリーン。

 風鈴の音に合わせて、心臓が脈打つ・・・それはまるで警戒を告げるかのように。

 チリンチリーン。

 何度目かの風鈴の音が聞こえたその時だった。耳鳴りのような高いキーンと耳を劈く、まるで山に登った時などに起こる耳鳴りのような甲高い音が、急に耳に鳴り響く。そして、それとほぼ同じタイミングで体の中に電流を流されたように、足の指の先までしびれるような、自分の思い通りにならないような感覚に襲われる。
 金縛りという現象だ。
 金縛り自体は、よくある事なので特に慌てることもしないのだが、この日だけは違った。
 何故なら、風鈴の音が、自分の耳元にまで迫っていたからだ。

 チリンチリーン。

 耳元で風鈴が鳴り響く。何かが居ると直感的に感じる。
 唯一動きそうな感触がある瞼だが、開く事は出来ず、恐怖から固くその瞳を閉じた。
 その時だ。
 ズシンと下腹部に何かが乗ったような圧迫感。そして首の辺りを締めるような感覚。
 いつもの金縛りと違う。
 その恐怖に頭の中でパニックを起こしていたその時。

 ふはははははははは…。

 頭の中で響く嗤い声。耳元ではない。頭の中にまるで脳の中に嗤いかけられたように低い男の声が響く。
 圧迫感と絞首と嗤い声。
 恐怖から、私はきつく目をつむり、咄嗟に自分が知っている限りのありったけの経を頭の中で読み上げる。
 浄土宗も般若信教も入り交じった、目茶苦茶なお経だった。
 どれくらい続いただろうか。不意に全ての感覚がふっと無くなる。
 飛び起きて、咽せながら布団に目をやると、掛け布団が腹部の所だけ水をこぼしたかのように染みついていた。自分も尋常ではない汗をかいていたが、それでもその濡れ方は普通ではなかった。
 幾分咽せながらも呼吸を調え、立ち上がれる事を確認すると、私は体の汗を拭くために洗面台に向かった。そして、鏡を見て驚愕する。
 私の首には、しっかりと見て取れる紫色に変色した十本の指の跡。 その後、私は幽霊と言うものが見れない体質になってしまった。 おそらく、幽霊を畏怖し、チャンネルを閉じてしまったのだろう。
 なぜ、そのような現象に見舞われたのかは終ぞ解らなかったが、後から解った事、気づいた事が少しある。まず、後に知ったことだが、霊と言うものは部屋に入った際に、壁伝いに移動するらしいのだ。私の部屋は北側と南側に窓が一つずつ。そしてその南側の窓にくっつくようにベッドがあった。霊の通り道に寝ていたのだ。
 そして、後から気づいたことだが、私が風鈴だと思っていたものは仏事の時に用いる倫(リン)というものだったのではないだろうか。だとすれば経を読んだこともあながち間違いではなかったと言える。

 あなたの寝室は窓と窓の間にベッドがありませんか? 壁に隣接した場所で寝ていませんか?
 もし、季節外れの…ひょっとしたら夏にもあるかもしれませんが、風鈴の音を聞いたときは気をつけて下さい。
 それは人非らざるものが奏でている倫の音色かもしれません。



>>>トップへ戻る


バックナンバーはコチラ

キューン